三石式花粉症撃退法
三石巌先生の著書より抜粋
花粉症の人は、花粉に対する閾値が低い。だから、同じ量の花粉が鼻や喉の粘膜に付着したときに、普通の人が平気なのに、花粉症の人は鼻がグズグズしたり目がショボショボしたりするのである。
したがって対策としては、その閾値を上げてやればいいことになる。そのために必要なのは、タンパク質とビタミンAである。
免疫という生体防御の仕組みには、病原体を直接、攻撃して殺す方法と、抗体というタンパク質を病原体に結合させ、虜にした後、処理する方法もある。
抗体にはA D M G Eの五種類のタイプがあり、それぞれに役割分担がある。この五種類の抗体を作る働きは、人によって異なっている。花粉症のようなアレルギー疾患は、Eタイプの抗体を作りやすい人に発症することがわかっている。
抗体Eはかつては寄生虫をターゲットにする役割を受け持っていたといわれている。ところが環境が改善されて寄生虫が減ったために、その抗体には「敵」がいなくなった。ならば抗体そのものを作らなければいいのだが、相変わらずその能力を維持している人がいる。すると、やるべき仕事のない抗体は、寄生虫の代わりにハウスダストや花粉などを「敵」とみなして攻撃するようになるのである。
体内には、炎症をおこす物質を蓄えたマスト細胞というものがある。異物が入り込んだことを察知すると、抗体はそのマスト細胞にくっついて刺激を与え、
起炎物質を放出させる。その働きで中心的な役割を果たすのが、ヒスタミンという物質である。そのため、「アレルギーには抗ヒスタミン剤」というのが常識になっている。
ただし、ヒスタミンは脳内では必要な情報伝達物質でもあるから、全部を力ずくで抑え込むのは問題だろう。薬に頼るよりは、栄養によって余計な働きを自然に抑えた方がいい。そこで働いてくれるのが、ビタミンCである。ビタミンCは、マスト細胞の中でヒスタミンが作られるのを抑制し、細胞の外へ出てきたヒスタミンの働きも失わせる。
免疫のハードルを上げるためのビタミンAと、ヒスタミンを抑えるビタミンC。さらに、炎症を起こした部分に発生する活性酸素対策としてのスカベンジャー。この三本柱が、花粉症をはじめとするアレルギーの基本対策となるわけである。
また、近年の研究によれば、ビタミンH(ビオチン)にも抗アレルギー作用があるといわれている。これはとくに卵の黄身に多く含まれているビタミンである。アレルギーの人は卵が食べられないケースが多いから痛し痒しといったところだが、卵黄のほかに、オートミール、大豆、エンドウ豆、落花生、鶏肉、豚肉、バナナなどにも含まれている。
さらに最近は、アレルギーへの対抗手段として、イチョウの緑葉エキスも注目されている。もともと、黄色くなる寸前のイチョウの葉にはフラボノイドという成分が豊富に含まれていて、血管や血液の働きを正常に保つ効果があり、血液循環障害に有効だとされている。それに加えて、イチョウの葉にはテルペノイドという成分が含まれている。このテルペノイドが、抗アレルギー作用を持っている。さらにこれらの成分は、活性酸素を除去する働きもある。
フランスとドイツでは、医者が患者に出す薬の中で、イチョウの緑葉エキスを成分にしたものがトップだという。日本では薬としての許可は下りていないが、機能性食品として売られているので、アレルギーで悩んでいる人は試してみてはいかがだろうか。